デジ☆ブログ第4回:適切なIT投資妥当性判断の考え方

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概要

中小企業にとってITは高価な道具で、できるだけ使わない方が身のためというイメージをもつ方々もがあるが、適切な判断基準を持つことで積極的かつ効果的な投資が可能になる。多くの企業で採用可能と思われる考えかたをご紹介する。

ソフトウェアのコスト構造を知れば単に高価だとも言えない

ITベンダーに、自社独自プログラムの作成を依頼するとすれば、オンラインの画面から1つの帳票を出力するものでも50万円程度かかることがある。データの抽出条件や帳票の形式が複雑な場合は100万円を超えることもある。
販売管理システムのパッケージを入れるだけで数百万~数千万という場合もある。安いと思って導入したパッケージソフトの一部を自社独自仕様にしてもらおうとすれば、本体より高いということも多い。中小企業にとって、ITというのは高価な道具という印象があるかもしれないし、ソフトウェア会社というのは不当に高い料金をとっていると思うかもしれない。
しかし、ソフトウェア開発というのは労働集約的作業であり、設計、製造、テストに大きな人件費がかかる。全世界で何億本も売れているパッケージソフトでも、一社のためだけのオーダーメイドのプログラムでも、開発する際のコスト構造は同じなので、独自開発が高価であるのは当然なのである。

積極的な競争力強化のために適切なIT投資判断基準をもつべき

 オーダーメイドに開発するプログラムに限らず、情報システムを導入しようという企業にとって、身の丈にあったシステムを最小限の費用で導入することは重要なニーズである。しかし、適切な投資判断なのかどうかに自信がもてないと、「なるべくなら導入したくない」という後ろ向きの姿勢になりがちとなり、必要な競争力強化がしにくくなってしまうこともある。

適切な投資判断のための2つのポイント

適切な投資判断をするためには、2つのポイントを押さえたい。
一つめは、組織で意思決定するに当たって、人によってブレが生じないように、判断のより所となり、しかも皆が納得する投資判断基準を決めておくこと。
二つめは、評価をするための手法である。案件により適した手法を選ぶことで、判断がしやすくなる。

IT投資の判断基準

基本的なIT投資判断基準は、投資額に見合うメリットがあるかどうかである。しかし、投資額は見積りをとれば分かるが、メリットは金額換算できるのだろうか。人件費削減、売上増加などで効果が換算できればいいが、最近では「社内コミュニケーションの向上」、とか「営業支援による売上増加」など、簡単に金額換算できないものの方が多い。
 これでもかと言うほどの前提を設けて無理矢理金額換算するのは適切な選択ではない。 

JUASの投資評価基準は「使える」

JUAS、(社)日本システムユーザ協会が提唱している考え方は現実的に活用することができる。

投資評価基準の考え方

金額換算できるものは「業務効率型投資」と呼び、これは投資額と効果金額で評価する。
金額換算が難しいもののうち、ネットワーク整備やパソコン導入など一般管理業務の業務基盤として不可欠な投資は「インフラ型投資」と呼び、対売上高などで年間の一人当たり費用に上限を設けて判断する。MS-Officeの1ライセンスの効果金額などは計算できないので、これは便利な考え方だ。机や椅子などと同様に考えるということになる。
定性的効果を狙う案件の場合や、営業マンの頑張りとセットで使う営業支援システム導入などの場合もITだけの効果換算は難しいが、こちらは「戦略型投資」と呼び、指標を設定、評価して判断する。戦略型投資は、最終的には事業の収益率などの向上につなげることを意図しているはずなので、IT以外の指標も含めて、バランス・スコアカードなどの手法を用いて指標を設定し、評価する。

投資評価方法

代表的な投資評価方法にはROI(投資利益率)、期間回収法、DCF(Discount Cash Flow)法、定性的評価、妥当性評価、リスク評価などがある。
金額換算できる場合は、期間回収を用いることが多い。たとえば3年での回収を基準としたとき、1000万円の投資を3年で回収するとすれば、年間333万円以上の効果がでればよい、とする評価手法である。
妥当性評価は、実施せざるを得ない案件に対して投資額が妥当かどうかを判断するものである。

適切なIT企画・導入プロセスの遂行が前提となる


投資額を考える場合、一体どれくらいかかるかを事前に調査しておかないと、一所懸命要件を整理して提案依頼をおこなっても、実際にITベンダーから見積りをもらったときに驚いて、プロジェクトが頓挫してしまうことがある。こうならないように、IT導入のプロセス、すなわち、企画、計画、要件定義、IT資源調達、導入の手順と、その都度の意思決定は適切に進めていきたい。

投資判断はITマネジメント全般の知識を集約して行なうべきプロセス

IT投資判断の適性化に向けた基本的な考え方をご紹介したが、投資判断はITマネジメント全般の知識を集約して行なうべきプロセスであり、理解しきれないところもあったかと思う。上記のうち、幾つかは稿を改めて、より詳細に検討してみることとしたい。

(執筆:山田一彦)


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