デジ☆ブログ第10回:独自開発かパッケージかSaaSか。IT実装形態選定の考え方

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概要

情報システムの新規導入や再構築の際には、独自開発とするのかパッケージとするのかなど、実装形態によって拡張性やコストが異なってくる。自社ビジネスの特性とライフサイクルの総コストを中心に判断するのが適切だ。

情報システムの実装形態には代表的な3つの選択肢がある

初期費用が安いと思ってERPパッケージシステムを導入したが、毎年の保守費が馬鹿にならないという話を以前はよく聞いた。ERPに限らず、パッケージソフトは初期導入費用の他に毎年の保守費として、定価の15~18%程度を支払う必要があることが多い。

情報システム導入時の実装形態には、独自開発(オーダーメイドのシステム開発)、業務パッケージソフトの利用、クラウドのSaaSの利用という大きな3つ選択肢が一般的に認識されている。それぞれに独自業務への対応柔軟性、費用モデル、保守性に特徴があるため、案件ごと、企業ごとに適したものを選択する必要がある。

ユーザー企業の独自業務への対応柔軟性

独自業務への対応柔軟性については、当然だが独自開発が最も適している。独自性のある必要な機能だけを念入りに作る場合にはこの形態でないと実現が難しい場合も多い。業務パッケージの場合は、アドオン(追加機能開発)やカスタマイズ(改造)をすることで独自業務の支援が可能だが、データベース構造などの関係で制限がでることもある。SaaSではカスタマイズというより用意された機能オプションの選択という形態なので、独自業務支援にも限界がある。

費用モデルの違いで考慮すべきこと

費用モデルについて一般的にいえば、独自開発は初期導入費用が大きく、導入後の保守費用は小さい。業務パッケージの初期費用は独自開発に比べてかなり低いが、上で述べたように毎年の保守費が結構高い。SaaSはパッケージの特性に似ているが、ベンダーが保有するサーバーシステムに自社の領域を追加するだけなので初期費用は低く、月額費用も利用者数に応じた費用となることが多い。

保守性でも3形態は異なる特徴を持つ

導入後の業務ニーズ変更への対応という意味での保守性をみると、独自開発は最も柔軟といえる。しかし、保守性を考えないその場しのぎの変更を繰り返していると、そのうちに、ちょっとした変更にも対応できなくなってしまうことも多い。業務パッケージでは、新たに欲しい機能がパッケージに既に備わっていればそれを使えば良いが、無ければ独自開発と同じだ。SaaSは機能として用意されていないものは基本的には利用できない。

実装形態選択の考え方: 自社独自業務仕様実現の必要度合い

以上のような特徴を踏まえた上で、導入検討時の実装形態の選択方法を考えてみよう。

最初の観点は、自社独自業務への対応についてである。

費用のかかる独自開発(アドオン、カスタマイズ含む)を避け、ベンダー提供の標準機能を使うことが費用を抑え、潜在不良に苦しめられないための定石である。従って、企業の競争力強化に余り関係の無い分野については、パッケージやSaaSの標準機能でできないことかどうかを、先ず真剣に考えるべきである。それまでの仕事のやり方が変わってしまうので、利用者からは反発が予想されるが、そこを乗り切れるかどうかがポイントだ。

逆に他社との差別化をするための機能はパッケージでは用意されていないので、独自開発が必要であり、ここでのポイントは、いかに業務にマッチした機能を迅速に作れるかである。積極的なビジネスモデル変革を繰り返す企業では、非常に重要な経営的要件といえる。

実装形態選択の考え方: ライフサイクル費用

費用面では、ざっくりといえば、最も高価なのは独自開発、最も安価なのはSaaSだ。業務パッケージは両者の中間だが、場合によっては最も高くもなるし、安くもなる。

ここでの考慮ポイントは、システム導入から廃棄するまでの総コストで考えることだ。JUAS、(社)日本システムユーザ協会の調査によれば、基幹システムの寿命の平均値は13.6年である。毎年の保守費率が15%のパッケージは、10年使うと初期費用と合わせ、初期費用の2.5倍のコストとなる。当面、必ず使う期間ということでも良いので、例えば5年のライフサイクルコストで複数の実装形態を比較してみると、意外な結論になることもある。

ライフサイクルコストは、実装形態が同じでも製品やベンダーによっても変わるので、決定する前に試算することは必須だ。

実際の案件では様々な要件を考慮するがやはりこの2点が重要

以上の考慮点のほか、例えば、システムが停止しないこと、すなわちソフトウェア不良が少ないシステムを導入するのであれば、販売実績の豊富なパッケージを選ぶべきという基準になる。  情報システム導入の実際の場面では、更に多くの要件を考慮すべきことも多いが、実装形態を決定するという意味で特に重要なのが、導入する案件のビジネス特性からくる独自業務の必要度と、ライフサイクル費用なのである。

(執筆:山田一彦)


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