デジ☆ブログ第17回:ITベンダーの提案評価をシステマチックに進めるノウハウ

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概要

複数のITベンダーから提案、見積りをもらったうえで、どれか一つを選定するのは、適切なIT資源調達には欠かせない手続きだが、選定のための評価を適切にできなければ意味がない。提案評価をシステマチックに、すなわち、適切かつ客観的に説明できるように進める方法を考える。

価格だけで決めない総合評価が必要だが、ノウハウが必要

公的機関では随意契約を減らし競争入札にしていくという流れがある。また、入札金額だけで落札者を決めるのではなく、品質(性能)も加味した「総合評価方式」で決めるようにしていこうというのは理にかなったことである(H14.7.15「加算方式による総合評価落札方式の導入について」(経済産業省)など)。

情報システムの調達においては、事前にどのような仕様で調達するかがユーザー側で完全に把握できているならば、価格以外の条件を全て統一して、価格だけで選定することも可能だが、現実には難しい。ITの専門知識、動向知識が不十分な中小企業においては、ほぼ不可能といえよう。

しがって、IT資源調達においてITベンダーからの提案を評価する際、価格はもちろん重要な判断要素ではあるが、それ以外の面も十分に検討した上で発注先を選定する「総合評価方式」である必要がある。しかし価格はデジタル情報で優劣がハッキリするが、それ以外のことを評価して総合的に何に決めるかというのは一筋縄ではいかない。以下はそのための参考としてのノウハウである。

IT資源調達における評価基準の作成

RFP作成から選定までの流れ

図に示すものが標準的なRFP(提案依頼書)作成から選定までの流れだが、RFP発行と並行して「評価基準」を作成することになっている。選考手順、評価基準は、なるべくならば提案受領以前に作成しておいた方がいい。

理由は2つある。一つは、提案を見たり説明を受けたりした後では、提案の見た目や説明のイメージが邪魔して、当初の調達目的に照らした評価がしづらくなるからである。もう一つは、民間企業では気にしないという人もいるが、恣意的な基準作成と疑われることを避けるためである。

いずれにしても評価基準を作成する。「xx取引の際、xxが指定できること」などのような評価項目ごとに基準を定めて、手順に沿って評価を行なうためである。

選考の手順におけるノウハウ

受領する提案書が少数ならば問題はないが、10を超えるような場合には全てを熟読して評価することは難しい。一定数に絞り込むために、次のような方法をとれるようにしておくとよい。

  1. 指定した提案参加条件を充足しないもの、提案書への指定した事項の記載がないものは評価対象外とする
  2. RFPに対応必須事項を記載しておき(これは提案参加条件でもある)、必須事項の対応が1つでも出来ない場合は、それ以上の評価をしない

総合点による優劣の判断

以上の関門を通過した提案については、このあと内容を確認していくことになる。一般的に行なわれているのは、評価項目に重み付け、ないしは配点を行ない、項目ごとの得点を加算して総合点で優劣を判断する方法である。

項目毎の採点

評価項目ごとの採点のためには、あらかじめ指標と、計算方法、得点決定方法を決めておく。

粗いやりかたとしては、項目ごとに○(満たしている)、△(一部満たしている)、×(不十分)の三段階を設定し、○は2点、△は1点、×は0点として、配点に掛けてその項目の得点を得る方法がある。もう少ししっかりとやるとすれば、どういうときが○で、どういうときが×なのかを評価基準表に明示的に羅列しておく。こうすればかなり明確な採点になる。

10段階やもっと段階を増やしても構わないが、それだけ評価基準表を作るのは大変になる。

私の経験から、大半の項目は実務的には3段階がいいと感じている。

選定の最終決定のためには

一先ずこれで総得点が集計できることになる。しかし、本当に総合点で発注先を決めてもいいのだろうか。また、567点対569点など僅差の場合でも機械的に総合点の高い方にきめていいのだろうか。評価基準作成、採点過程を考えると難しい問題だが、それも含めて、あらかじめ評価基準に決めておきたい。

とはいえ、実務的には、次のように考えることをお奨めする。

  1. 得点で大差が付いた場合は、疑うこと無く高い方がいい。僅差の場合は、選挙と同じだが、もう一度採点過程を見直す。それでも僅差なら配点、項目の重み付けを見直す。
  2. 最終判断の権限は企業の意思決定者にある。得点と評価者の意見を添えて最終的な意思決定をしてもらう。

(執筆:山田一彦)


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