デジ☆ブログ第19回:システムの効果測定はパターン化してPDCAにつなげる

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概要

在庫削減、人員削減などが目的の業務効率型投資であれば、効果が数値に表れるので、情報システム導入の効果は比較的測定しやすい。売上増加などが目的の戦略型投資の場合、単純計算は難しく、改革の目的に対する貢献の指標を設定して、業務改革全体のなかで評価する。どちらのパターンでも、効果と費用を合わせて評価し、業務の継続的改善につなげていく。

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情報システムの本番がスタートしたら効果測定をはじめる

情報システムの本番稼働が無事にスタートしても、最初の頃はトラブルや利用者からの問合せで、システム担当者としてはなかなか落ち着けないことも多い。しかし、情報システム導入の目的が達成されるのは、ここからの日常運用を通してである。さっそく、システム導入の効果測定に取りかかりたいところだ。

効果が出ているのなら、もっと出すようにならないかという検討の余地があるし、効果が出ていないのであればボトルネックを見つけて効果が出るように改善していくべきだ。

IT投資パターン別の効果測定

情報システムの投資妥当性評価は3つの投資パターンでするのが良さそうだというのは以前書いた記事(デジ☆ブログ第4回:適切なIT投資妥当性判断の考え方)で述べた。このうち、業務効率型投資は、対応人員削減や在庫削減などが目的であり、効果測定もさほど難しくはない。インフラ型投資は、一般管理業務の業務基盤に対するものなので、1件1件の効果測定はそもそもできない。以下では、戦略型投資に分類される、ITだけの効果測定が難しい案件についての考え方を整理してみたい。

戦略型投資の業務改革の例

現在は、膨大な単純作業分野でITが導入されていない分野はほとんどなく、多くは人的な活動と深く関連した形でのIT導入が多い。これが戦略型投資のパターンである。例として、次のような営業業務改革を例に考えてみたい。

戦略型投資の効果

この図は売上向上に向けて取り組もうとする4つの要素、「商談時間の増加」、「顧客リピート率向上」、「成約比率向上」、「営業マンのスキルアップ」に好影響を与える要素が右側に矢印でつながっている。二本線で囲まれた楕円がITに関連する部分である。

業務改革の成果測定の考え方

仮に、ITの部分が全て完璧な出来上がりであったとしても、例えば、営業マンの事務負担が減った分サボっていては商談増加にはつながらないし、いくらWebサイトで良い情報を提供しても顧客と対応する者が不親切であればリピート注文にはつながらない。

もちろん、このような要因の関連性はシステム開発より前の業務改革の企画の際に設計しておくべきものである。ITが支援する要因の他にも重要な要因を洗い出しておき、人的な作業プロセスと管理によって目的を達成するように考えておくべきものだ。

この場合、最終結果の売上高だけを見て管理していてはだめで、その手前の4つの要因、さらにそれに影響を与える要因にも指標と目標値を設けて、要所要所で測定、評価して目標値の達成に向けて活動をしてゆくのである。このように会社全体の目標から段々に目標値をブレークダウンして、最終的に個人の日々の目標にまで連動させる手法としては、バランススコアカードがあり、導入している企業も多い。

指標と測定に工夫が必要

しかし、実際にこれをやろうとすると2つの点で工夫が必要だ。

一つは、どこに指標を設けるかである。全ての活動に指標を設けてしまうと、測定は大変だし、どこを改善していいかの的が絞りにくくなる。試行錯誤は当然あっていいが、この図のように図解してみて、さらに影響度の強弱を表示させ、重要なポイントを重点的に管理するようにしたい。

二つめは、指標の測定はなるべくならば情報システムで自動化したい。集計はおそらくパソコンを含めたITで行なうことになるので、新しく情報システムを導入するのであれば、この点にも配慮して、指標数値を集めてこられるような設計としたい。本番稼働後に機能追加しようとすると大変なので、あらかじめ考慮できればベストである。

情報システムの導入効果測定のポイント

少々回り道をしてしまったが、情報システムの導入効果測定のポイントを、上記を踏まえて整理すれば、以下の点に集約できる。

  1. 戦略型投資の場合は業務改革全体で、目的に向かった要因を整理する。
  2. 整理された要因のなかで情報システムの果たす役割を明確化し、指標と目標値で日常的に評価、分析する。これが効果測定となる。
  3. 測定された成果が目標値に達していない場合、その要因を分析して改善するサイクルを実施する。
  4. 業務改革全体の中で重要な指標の取得と評価がしやすくなるように情報システム導入時には、データが取得できる仕組みを考慮しておく。

ここで測定した成果は、初期投資とランニングコストを合わせた総コストと合わせて評価することで、情報システム投資の評価になるのである。

(執筆:山田一彦)


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