デジ☆ブログ第22回:DX(デジタルトランスフォーメーション)のロードマップの描き方のヒント

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概要

DX(デジタルトランスフォーメーション)はバズワード的に用いられている一面があるが、自組織(企業)でのDX化に向けたロードマップを描いて実行計画を策定すればリスク低減を図りながら推進が可能となる。今回は、ロードマップを描く上で参考となるフレームワーク等の基本的な考え方を紹介する。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

バズワード(buzzword)的に用いられるDXには明確な定義がないが、令和3年 情報通信白書*1では下表のとおり定義されている。

デジタイゼーション既存の紙のプロセスを自動化するなど、物質的な情報をデジタル形式に変換すること
デジタライゼーション組織のビジネスモデル全体を一新し、クライアントやパートナーに対してサービスを提供するより良い方法を構築すること
デジタルトランスフォーメーション組織のビジネスモデル全体を一新し、クライアントやパートナーに対してサービスを提供するより良い方法を構築すること
DXの定義

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

従来のデジタル化は「デジタイゼーション」に相当し部分最適な色彩が強く、それがIT化の進歩と共に「デジタライゼーション」で全体最適化へと近づいたといえ、さらに「デジタルトランスフォーメーション」では組織内外のエコシステムで付加価値の創出へと昇華する時系列の流れとなっている。

これをステージアップの図で示すと下図のようになる。今回の題目である「ロードマップ」を描くにも、現在のポジショニングを明確にしないと、What「何を(目的)」How「どのように(手段)」するか決まらず、その根拠となる Why「なぜ(理由)」 も曖昧になってしまう。

DX化に向けたステージアップ

ビジネスフレームワーク

「As is / To be」ビジネスフレームワーク

現在のポジショニングを明確するには、下図のような課題解決に用いる「As is / To be」ビジネスフレームワークによる分析が有用である。

「As is/To be」ビジネスフレームワーク

このフレームワークは、自分達のありたい姿を「To be」として定義し、それに対する現状を「As is」として捉え、その「Gap」を問題と認識する。その上で、問題である「Gap」を構成する多くの問題点から最も効果的な課題解決となる「Action」を導いて実行することである。

「ダブルループコントロール」ビジネスフレームワーク

ITコーディネータ(ITC)プロセスガイドライン*2には、下図のような「ダブルループコントロール」ビジネスフレームワークの考え方が紹介されている。

「ダブルループ」ビジネスフレームワーク

このフレームワークのポイントは、「ネスト(入れ子)構造」となっていることである。このような考え方を「As is / To be」ビジネスフレームワークにも適用でき、課題解決の施策検討が構造分析のアプローチで可能となる。

組織成熟度モデル


ITコーディネータ(ITC)プロセスガイドラインには、「経営の成熟度」「IT化の成熟度」の考え方も紹介されている。
もともと成熟度モデルは、ソフトウェアを開発する組織の成熟度を測るもので、次のような段階的なレベル分けされたCMM(Capability Maturity Model:能力成熟度モデル)として表現される。

  • レベル1:初期段階
  • レベル2:管理されはじめた段階
  • レベル3:定義した段階
  • レベル4:定量的に管理された段階
  • レベル5:最適化された段階

このような考え方を経営、IT化へ応用したのが、「経営の成熟度」「IT化の成熟度」である。

前述のDXの定義にあるとおり、企業(組織)は

  • 外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応
  • 内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革

を求められており、企業(組織)を構成している主人公である従業員*3を含めた「組織成熟度モデル」を考えるべきである。

以上のように、DX(デジタルトランスフォーメーション)のロードマップを描く上で、「DXの定義」「As is / To be」「ダブルループコントロール」ビジネスフレームワーク「組織成熟度モデル」の基本的な考え方を概説してきたが、これを統合的に用いることでDXを推進する羅針盤ともなる。
実行面では、ありたい姿のDXの最終的なイメージを持ちつつ、あまり大上段に構えることなく、「ロードマップ」「組織成熟度モデル」に沿った身の丈に合ったレベルからスタートし、「PoC(Proof of Concept:概念実証)」で小さな成功体験を積み重ねて「組織的な学習」することが成功の王道と考える。

*1:令和3年 情報通信白書のポイント
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112210.html

*2:ITコーディネータ(ITC)プロセスガイドライン Ver.1.1(ダイジェスト版)
https://www.itc.or.jp/about/guideline/dlfile/AbridgedPGL_JapaneseFF2.pdf

*3:IT 融合人材育成における組織能力評価指標(成熟度モデル)活用事例
https://www.ipa.go.jp/files/000044672.pdf

(執筆:鎌田 昌彦)

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