概要
利用者が必要とする情報システムの価値は、「これを使えば出来ること」である「機能」が中心といえるが、「『機能』がいつでも快適に使える」、「困ったときは助けてくれる」ということも重要な要素だ。機能以外の価値は常に努力しなければ満足の出来るレベルには維持できないし、実現できるレベルはコストとの関係からも決まってくることが多い。
機能だけではない、システム利用の価値
普段何気なく業務で使っている情報システムの動作が遅くなりイライラしたことや、ダウンして半日仕事にならなかったという経験がある方も多いと思う。これが余りにひどければ「こんなシステム、使い物にならない」という評判になってしまう。
情報システムは業務で使われなければ、単なる不良資産である。業務で使われるためには、必要十分な機能を有していることのほかに、次のようなことがらが一定のレベルに達している必要がある。
- 端末応答時間などの速度性能
- 沢山のデータが入ってきても処理できる容量
- 許容できる(短い)停止時間であること(これを「可用性」という)
- ヘルプデスクが使いやすい、などの付帯サービス
これらはシステムが順調に使えているときは気にもならないので、利用者からは見えにくいものだが、業務機能と同様に重要なシステム利用の価値である。
ただ、業務機能はプログラムを一旦導入してしまえばそれで実現できるが、これらは維持するために、それ相応の努力の継続が必要となる事項だ。ITサービス管理の世界では、「サービスレベル」という言葉で呼ばれている。
サービスレベルとは
サービスレベルというのは、情報サービスの利用者と提供者が互いに意識すべき価値目標である。サービスレベルとして意識されるものは、動的に値の変わるものが多く、監視しながら大きく逸脱しないように管理する必要がある。
例えとして、端末応答時間を見てみよう。
ある処理は通常2秒くらいで応答が返ってくるが、夕方や月末など利用者が集中する時には10秒くらいになることもあるとする。これがあらかじめ想定され、利用者にも了解を得ているものならば問題ない。しかし、だんだんと遅くなって、現在は15秒、20秒かかることもある、ということになると利用者は業務に支障をきたし始め、不満はいつか爆発する。
サービスレベルは端末応答時間のような重要な事項についてあらかじめ目標値を定めたものであり、定期的に監視し、早め早めに手を打って管理するためのものである。
システムの容量、速度、可用性は密接に関係する
新しく本番稼働させる情報システムは、目標としての各種容量、守るべき速度性能、目標とする可用性の値を決めて設計をおこなう。各設計目標値は関連するものも多く、例えば、目標値よりも多くの量を処理することになれば端末応答速度が低下したり、容量オーバーとなればシステムがダウンしたりすることもある。
サービスレベルはコストとの関係性が大きい
また、大量の処理を一定時間内に処理しようとすればその分高性能のサーバーや回線が必要になるなど、その分コストに跳ね返ってくるケースも多い。可用性を向上させるためのサーバーや通信回線の二重化なども同様だ。
これら設計目標値のうち、本番稼働後に利用者に関係してくるものがサービスレベルになる。長年システムを利用していると、商品数や顧客数が当初目標を超えることもあり、ソフトウェアの設計を見直すとか、サーバーを高性能機に入れ替えるといったシステム変更が必要になることがある。
実施しようとすれば、当然、コスト関係にしてくる。コストを考えて、利用者が我慢できればそれでよいが、サービスレベルを維持しようとすればコストが増えるという関係になる。
サービスレベル管理のポイント
以上の性質を踏まえ、運用管理においてサービスレベルを指標として利用していくとすれば、次のような進め方のポイントがある。
- システムサービスの目標値となるサービスレベルを定めて、利用部門と合意するなどの公式化をする
- 早めの対応が可能なように、サービスレベルに基づいて各種指標を設定し、定期的に測定し、評価する
- 測定、評価結果を利用部門と共有し、対策とコストに関する方針の共通認識をおこなう
(執筆:山田一彦)
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